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東京高等裁判所 昭和32年(行ナ)51号 判決

原告 スタンダード・ソウイング・エクイツプメント・インポート・カンパニー・インコーポレイテツド

被告 特許庁長官

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

原告のため上告の附加期間を五ケ月と定める。

事実

一  請求の趣旨及び原因

原告訴訟代理人、特許庁が昭和二十九年抗告審判第一、四三八号事件について昭和三十二年四月十七日にした審決を取り消す、訴訟費用は被告の負担とする、との判決を求め、請求の原因として次の通り陳述した。

一、訴外鈴木実は、昭和二十四年七月二十日、別紙表示のとおり、「UNIVERSAL」なるアルフアベツト文字をゴヂツク体で横書して成る商標につき、第十七類他類に属しない機械器具及びその各部並びに各種の調帯、ホース、パツキングを指定商品として、特許庁に登録出願をしたが(同年商標登録願第一二、四八八号)、原告はその後右商標登録出願より生ずる一切の権利を右鈴木から譲り受け、昭和二十八年十一月四日に被告に対して出願人名義変更の届出を了した。特許庁は右出願に対し昭和二十九年一月三十日に拒絶査定をしたので、原告は同年七月二十三日に特許庁に対して抗告審判を請求し、右事件は同年抗告審判第一、四三八号として係属、その間指定商品は第十七類ミシン及びその各部と訂正されたが昭和三十二年四月十七日に至つて、右抗告審判の請求は成り立たない旨の審決がされ、原告は同年五月十日に右審決書謄本の送達を受け、同年十月九日まで右審決に対する訴提起の期間を延長された。

審決は、その理由において、本願の商標を構成する「UNIVERSAL」の文字は元来「宇宙の」又は「万有の」なる意味を有する英語であつて、機械類については「万用の」又は「何にでも適用又は利用される」という意味で使用せられている用語であり、我国においても機械の性能又は型式を表わす用語としての「万能」又は「万能型」の原語として、「ユニバーサル」の用語が普通に使用せられていることは顕著な事実であるから、本願の商標はこれをその指定商品に使用するときは単にその商品の性能又は型式を表わすに止まり他人の商品とその出所を甄別するに足る標識とならないものと認定したうえ、原告提出の全証拠によつても、右商標が我国において永年にわたつて使用せられ、取引者又は需要者間に広く認識せられた結果、他人の商品とその出所を甄別するに足る顕著性を有するに至つたものとする事実を認めることができない、と説示している。

二、右審決は次の理由によつて不当である。

(一)、(1) 機械の性能又は型式をあらわす用語としての「万能」又は「万能型」の原語として「ユニバーサル」の用語が普通に使用されている、との審決の説示は、我々の社会通念に反する。我々の経験上かような用語法はかつてみられないものといつて過言でない。「ユーバーサル」なる原語をそのままでそのように用いる例はきわめて限られたものであるのみならず(辞典類にみられる範囲では、「ユニバーサル・ミリング・マシン」と「ユニバーサル・カレンダー」との二つがあるくらいである。)、「万能」又は「万能型」の原語として「ユニバーサル」の語が普通に用いられるということもない。一般人にあつては、相当程度英語の素養のあるものでも、「ユニバーサル」に「万能」の意のあることを知るものは稀であり、「ユニーバーサル・ミシン」といわれれば、「万能ミシン」という風には感じないで、「宇宙ミシン」ととるほうが通常であろう。仮に技術関係において「ユニバーサル」を「万能」の意味で使うことがあるとしても、ミシンの購買者は一般人であるか、被服業者等これを使用する製造業者であつて、これらの人々が技術関係の用語を使用しこれに慣れていることは稀であろうから、このことに関する被告の主張はミシン購買者層の言語意識を考慮しなかつたとの非難を免れない。

(2) 現にアメリカ合衆国においても、本願と同様「UNIVERSAL」のアルフアベツト文字より成る商標が、同国商標規則第二十三類刃物、機械、工具及びこれらの部分品に属する家庭用ミシン及びその各部、附属品を指定商品として登録されているが、米国の商標法上も商標権者の商品が同種の他の商品から甄別されるごとき商標でなければ登録を許さない原則をとつていること、及び「ユニバーサル」が英語の単語であり、米国が英語をその国語としていることを考えれば、本願商標に特別顕著性がないとした審決の見解の誤であることが一層強くうかがえる。(わが国においても、過去において、ミシンその他の機械類について、「ユニバーサル」の語を要部とする商標の登録が許された例に乏しくない。)

(3) 次に出願商標に特別顕著性があるか否かは、指定商品との関係において考察されなければならない。本件出願商標の指定商品は第十七類ミシン及びその各部であり、したがつてその特別顕著性の有無は、ミシン及びその各部なる指定商品に右商標が附せられて市場に出された場合に、右商標により指定商品の出所を指摘し、その誤認混同を避けしめることができるか否かの判断にかかるのである。しかるに、特にミシンについて、その「万能」又は「万能型」を表わす用語として「ユニバーサル」なる語の用いられていないことは、我々に顕著な事実であるから、仮にフライス盤やカレンダーについて「ユニバーサル」なる語が一般的に用いられるとしても、それをミシンについての判断の根拠とすることには、論理の飛躍があるといわざるを得ない。

(二)、我国ミシン業界において、「ユニバーサル」なる商標を附したミシンは、原告の取扱にかかるものであることが広く認識され、本願商標は原告の商標として既に顕著性を有するに至つている。

原告の親会社なる訴外スタンダード・ソウイング・エクイツプメント・コーポレイシヨンは、昭和二十四、五年頃より日本国内における多数のミシン製造業者に本願商標又はその類似の商標を附したミシンの頭部を製造させてきて現在に至つており、その数量は最近において月二千台を下らず、我国ミシン輸出の重要な部分を占めている。また、昭和二十九年頃には、原告自身本件出願商標を附したミシン頭部を日本国内業者に製造させて外地に輸出した事実があるのであつて、かような事実がある以上、被告の主張するように本願商標を国内で使用した事実すら認められないとするのは誤りである。およそ、「使用による顕著性の取得」という場合の「使用」とは、顕著性を取得する原因となるべき一切の使用行為を指すのであつて、当該商標を附した商品が国内で販売された事実がないにしても、例えば広く宣伝広告されるとか、相当の規模において生産或いは輸出されることにより、一般人若くは取引業者の脳裏に刻みこまれ、当該商標が商品の出所を甄別せしめる働きを有するようになり得るのであつて、右のごとき各行為はまさに国内における商標の使用というべきである。

本件についてみるに、右に述べたごときミシン頭部の製造及び輸出の事実は本件出願商標につき顕著性を附与する可能性のある永年の使用の事実に外ならず、これによりもし右商標が、普通一般の人が取引市場において用うべき程度を標準として、商品の出所を明らかにする作用を営むに至るときは、たとえ右商標がア・プリオリには顕著性を有しないものとしても、ア・ポステリオリな顕著性取得をこれに認めなければならない。

なお、原告会社は前記スタンダード・ソウイング・エクイツプメント・コーポレイシヨンと支配を共通にし、後者の輸入代理業務を日本において行うことを目的として設立された会社であつて、本店及び代表者を共通にし、実質上同一会社というをはばからない関係にあり、また右訴外会社は原告会社に対して本件商標を日本において使用することを許諾している事実もあるのであつて、被告の指摘する米国の登録商標の名義人が訴外会社であり、右商標は原告のものでないという事実は、何ら本件の判断を左右するものではない。

(三)  仮に被告のいわゆる技術関係の用語を使用する人々が、「ユニバーサル」なる語を「万能」の意にとるということが正しいとし、かような人々がミシンの取引に関係するとしても、それはミシンの取引に関係する人々のうちごく一部にすぎず、他の多くの人は「ユニバーサル」の語を決してさような意味にはとらないこと、前述のとおりであり、更に技術関係の用語を使用する人々は製造部門に属するものが大多数で、一面ミシン製造業者間にあつては「ユニバーサル」なるマークが原告取扱の商品を表わすものとして周知されていることは、前記の事実に徴して一点の疑も容れないから、結局右マークはミシン取引に関係する人々の全部について顕著性を有することになる。ある商標が特定の人々の間では本来顕著性を有しないが他の人々の間では有するといつた場合に、その特定の人々の間において使用による顕著性を取得するに至つたときは、結局全体の人々について該商標が顕著性あるものとして取り扱われなければならない。被告主張の「ユニーバーサル」なる語の用法が機械技術用語を用いる人々の間では正しいとしても、それは結局その商標の登録を拒絶する理由とならないことは、右の点よりしても明らかである。

第二答弁

被告指定代理人は、主文第一項通りの判決を求め、次のとおり答弁した。

一、原告が本訴請求原因として主張する事実中、原告が鈴木実から原告主張の商標登録出願より生ずる一切の権利を譲り受け、出願人名義変更の届出を了したが、拒絶査定を受け、抗告審判を請求し、その間原告主張のとおり指定商品を訂正したころ、原告主張の日に、その主張の通りの理由のもとに右抗告審判の請求は成り立たない旨の審決がされ、その主張の日に原告がその審決書謄本の送達を受け、かつ出訴期間が原告主張のとおりに延長されたこと、及び原告主張の商標がその主張のとおりアメリカ合衆国において登録されている事実は認めるが、原告会社とスタンダード・ソウイング・エクイツプメント・コーポレイシヨンとの関係は知らず、前記審決を違法であるとする原告の主張は争う。

二、機械の性能又は型式を表わす用語としての「万能」又は、「万能型」の原語として「ユニバーサル」の語が普通に使用されていることは、辞典類の記載に徴して明らかである。このようにいうのは、原告の曲解するように、「ユニバーサル」の語が日本語として普通に使用されているというのではなくそれが「万能」又は「万能型」の原語として使用されていることは顕著な事実であるというのであつて、我国の技術関係の用語として原語がきわめて普通に使用されている現状において、機械関係について「ユニバーサル」といえば、「万能」又は「万能型」というに等しいことは、議論の余地のないところである。

原告は本願の商標と同一構成の商標が現にアメリカ合衆国において登録されている事実を挙げて、我国においても登録せらるべき適格性を有すると主張するが、他の国において異なる法制のもとになされた認定をもつて我国の商標法の適用を拘束し得ないことはもちろんであつて、我国の商標法に規定する特別顕著性の要件の有無についての判断は、何らアメリカ合衆国特許局審査官に拘束されるものではない。なお、米国における右登録商標は原告会社のものではなく、訴外スタンダード・ソウイング・エクイツプメント・コーポレイシヨンがその登録名義人であることを指摘する。(また事実関係を異にする他の既登録の事例をもつて、本件審決の当否を云為することも妥当でない。)

また、出願商標に特別顕著性があるか否かは指定商品との関係において考察されなければならないとの原告の主張は、商標法における「特別顕著ナル商標」の意味を解しない謬論であつて、理由のないものである。すなわち、「ユニバーサルミシン」が他の営業者の商品と混同を来すか否かの問題は、商標と他の商標との問題であり、商標法第二条第一項第九号又は第十一号の問題となつても、同法第一条第二項の問題とはならない。本件の問題は商標登録制度の対象たる「商標」の成立要件に関するものであつて、「文字・図形・記号又はこれらの結合」でないものが商標法上商標と認められないのと同様に、商品の形状・性能等を表示したに過ぎないものは商標登録の対象とならないということであるから、「ユニバーサルミシン」が例えば「ジグザグミシン」又は「釦附ミシン」と同様に商品ミシンの性能を示すか否かにかかるのであつて、もしそれが肯定されるにおいては、商標としての登録適格を認めることができないというのである。

三、次に本件の出願商標について、原告は、永年これを使用した結果我国において一般に原告の商標として認識されるに至つたと主張するが、さような事実はもちろん、我国において原告会社が本件の商標を使用した事実すら認めることができない。

商標法上の商標とは、自己の営業に係る商品であることを表彰するために使用する文字・図形・記号又はこれらの結合であつて、特別顕著なるものをいうことは、商標法第一条に規定するところであるから、商標の使用とは、換言すれば商標としての使用、すなわち取引において自己の営業に係る商品と他人の商品とを区別するための標識として使用することでなければならない。したがつて、元来特別顕著なものでないため商標としての機能を有しない文字等が顕著性を取得すべき使用とは、商品の市場において商品と営業者との直接関係を認識せしむるに足る使用でなければならない。してみれば、商標としての機能を有しないある一定の文字・図形・記号又はこれらの結合が使用によつて商品の出所表示の機能を取得するためには、当然商品市場において特定商品に即してその営業者の表示と共に(例えば他に要部を有する商標の一部として、又は営業者の氏名、名称と共に)使用すること、更に取引者又は需要者の間においてその商品の営業者を認識せしめるに十分な期間と広範囲の使用を必要とすることは、言うまでもない。原告が本件において主張するように、国内の製造業者がその製造にかかるミシンの頭部を輸出するに際しその商品に「UNIVERSAL」の文字を表示した事実があつたとしても、それは営業者の商品甄別標識として使用したものではなく、単に商品の製造元を表示したに過ぎない。いわんや原告会社が右標章を国内において使用した事実とはならないこと、もちろんである。

要するに、原告の主張はいずれも理由がなく、本件審決を取り消すに足るべきものとは認められない。

第三証拠〈省略〉

理由

一、訴外鈴木実が別紙表示のとおり「UNIVERSAL」なるアルフアベツト文字をゴヂツク体で横書して成る商標について原告主張の通りの商標登録出願をし(昭和二十四年商標登録願第一二、四八八号)、原告は右出願より生ずる一切の権利を譲り受けその主張の日に出願人名義変更の届出を了したが、拒絶査定を受けたので、抗告審判を請求し(昭和二十九年抗告審判第一、四三八号)、かつその間指定商品を第十七類ミシン及びその各部と訂正したところ、昭和三十二年四月十七日に至つて、原告主張の通りの理由のもとに、右請求は成り立たない旨の審決がされ、原告主張の日にその審決書謄本が原告に送達され、かつ原告主張のとおりに出訴期間が延長された事実については、当事者間に争がない。

二、成立に争のない乙第一号証の一、二、三、第二号証の一ないし六(広辞苑及び最新工業大辞典)によれば、「UNIVERSAL」なる英語は、機械類について、「万能」又は「万能型」を意味する普通語であつて、我国において時には「ユニバーサル・ミリング・マシン」(万能フライス盤)というように、原語である成語そのままに用いられていることさえある事実が明らかであつて、そのように成語として用いられないまでも、我国において構械の性能を表現するについて英語の原語を用いることがしばしばあることは、当裁判所に顕著なところであるから、「ユニバーサル」なる語を、本件出願商標の指定商品であるミシンすなわち裁縫機械につき用いるときは、その性能或いは型式を示す叙述語であると解せられ、したがつて、「UNIVERSAL」の文字をもつて構成される本願商標は、自己の商品を他人の商品から区別する標章としての機能を有しないもの、すなわち商標法第一条第二項に規定する、「特別顕著」であることの要件を具備しないものといわなくてはならない。そして、右の結論は、指定商品が、ミシンやその各部、附属品であることによつて、何ら影響のないものというべきである。また、アメリカ合衆国において、と本願商標同様に「UNIVERSAL」の文字で構成される商標が、同国商標規則のもとにおける第二十三類刃物、機械、工具及びこれらの部品に属する家庭用ミシン及びその各部、附属品を指定商品として登録されていることは、被告の認めるところであるが、法制及び社会事情を異にする外国における登録の事例が我国の商標法の規定する登録適格を判断するについて絶対の基準とならないことは、言うまでもない。(我国の他の既登録の事例も亦、それぞれの事実関係においてその当否を考うべきであつて、これをもつて本件を律することは相当でない。)

三、次に、原告は、本願商標は永年の使用によつて特別顕著性を取得した、と主張するので、この点について検討する。

成立に争のない甲第七号証、第一〇、第一一号証、第一三号証(東京商工会議所会頭の証明書、日本ミシン輸出組合の組合員あて通知、原告代表者の宣誓口述書、調査嘱託に対する通商産業省重工業局重工業品輸出課長の回答)、証人土居太郎の証言により輸出用ミシンの頭部に付せられたマーク(甲第九号証は転写マーク)であることを認め得る甲第九号証、検甲第一号証に、証人仲野和人、土居太郎の各証言を合せ考えれば、原告会社はスタンダード・ソウイング・エクイツプメント・コーポレイシヨンの輸入代理業務を行うために設立されたもので、両者は支配を共通にし、かつ、代表者及び住所を共通にする法人であるが、右親会社たるスタンダード・ソウイング・エクイツプメント・コーポレイシヨンは昭和二十五年頃から累年日本における製造業者に注文して、ミシンの頭部を製造させ、これを米国に輸入して今日に至つているところ、右頭部には「UNI-VERSAL」或いは「Universal」の文字を表わすマークが附せられており、その結果日本でミシン頭部の製造及び輸出に携わる業者の間において「UNIVERSAL」といえば、スタンダード・ソウイング・エクイツプメント・コーポレイシヨンの注文にかかるミシンの頭部を表彰するマークとして知られていること、及び右スタンダード・ソウイング・エクイツプメント・コーポレイシヨンは原告に対し商標として日本でこれらのマークを使用することを許容している事実を認定することができる。

しかし、元来特別顕著でない商標が永年の使用によつて特別顕著性を具えるに至るためには、それが我国の取引社会において相当期間にわたり、かつ相当の範囲において、その者の営業にかかる商品を表彰するために使用された事実を必要とすると解すべきであることは、元来取引において自他の商品を区別することに商標の機能が存する事実にかんがみ、当然である。しかるに、前に認定した事実によれば、我国では一部のミシン頭部の製造業者及びその輸出関係者が、原告の親会社の注文によつて「UNIVERSAL」又はこれに類するマークを附けたミシンの頭部を製造して米国に輸出した、というに過ぎず、たとえばそれが相当の期間にわたり、かつ多数に上つたとしても、結局これらの製造業者や輸出関係者がこれを知るにとどまり、このマークを附けたミシンが原告の商品として国内で販売されたものでないばかりか、一般需要者や国内ミシン販売業者としては、一名も右マークの使用に関係したもののあることを認め得ないから、本件出願商標をもつて、広く取引者及び需要者の間において、原告の商品を表彰するものとして認識されたということはできない。原告は、顕著性取得の原因たるべき使用とは必ずしもその商標を附した商品が国内で販売された事実を要せず、例えば広く宣伝広告されるとか、相当の規模で生産輸出されることにより、一般人又は取引業者の脳裏に刻みこまれ、その商標が商品の出所を甄別せしめる働きを有するようになり得る、と主張するが、たとえそうであるにしても、前示認定にかかるミシン頭部の生産輸出の事実は、原告の商品であるミシン及びその各部の我国内における生産、販売等と関係がないばかりでなくその宣伝、広告等によつて、原告の本願商標の特別顕著性の取得に多少でも役立つていることを認め得べき証拠がないので、原告出願の本件商標につき永年使用による特別顕著性を認め得ないとする、前示結論には影響がない。

四、原告は、更に、ミシン製造業者以外のものは、「UNIVERSAL」につき前に認定したような叙述的意味のあることを知らず、また、ミシン製造業者は本願商標の原告の商品を表彰することを認識しているから、彼是相まつて本願商標は顕著性を具有する、と主張するが、「UNIVERSAL」の語が機械類につき前認定のごとき一般的意義を有することを知るものはミシン製造業者のみに限らないことはもちろんであり、またミシン製造業者といえどもひろく本願商標を原告スタンダード・ソウイング・エクイツプメント・インポート・カンパニー・インコーポレイテツドの商品を表彰するものと認識している事実を認め得ないこと、前記のとおりであるから、原告の右主張も亦とうてい採用に値しない。

五、これを要するに、本件出願商標は、商標法第一条第二項に規定する、「特別顕著」なることの登録適格を有しないものというのほかないから、これと同趣旨のもとに原告の登録出願を排斥した本件審決は相当であり、その取消を求める本訴請求は理由がない。

よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、上告附加期間の定につき同法第百五十八条第二項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 内田護文 原増司 入山実)

本件出願商標〈省略〉

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